フランスでの交渉

 私は2010年2月に(株)ゲノム創薬研究所が開発した化合物の中から数点のデータを持って共同研究などの可能性があるフランスの研究所、ベンチャー企業、公社を8社訪問し、共同研究ないし出資などの交渉を行ないました。訪問の様子(一部)は下記の通りです。帰国後に数社と共同研究について継続的に交渉を行いましたが、化合物と技術については高く評価されましたが、国際間の契約となることから知財の扱いが容易でないことと、リスク分担などについて、合意に至らずプロジェクトの実施には至りませんでした。フランスの企業、地方公社を訪問し、現地で受けた私の印象は、日本の企業、公的な機関に比べてイノベーションにとても熱心で、潤沢な資金が準備されているというものでした。

 尚、(株)ゲノム創薬研究所は抗菌薬の候補物質としての化合物の薬効・毒性を調査して薬剤を開発する技術を保有しており、共同研究に興味をお持ちの方はご連絡ください。技術内容については、下記URLの同社ブロシャーの3頁ご参照。 Microsoft Word – ã•’æ©‰æœ¬ç·¨éłƒä¸ (genome-pharm.jp)

1.パスツール研究所(パリ2月19日)訪問

パスツール研究所         パスツールの遺品(カイコの標本)

 フランス人上司と東大出身の農学博士と面談。開発した化合物のを抗菌薬として、共同開発することの可能性をパスツール研究所内にて検討するとのことで、開示できる資料を提供しました。同農学博士によると同研究所の雰囲気は東大に似ているとのこと。面談後に昼食を共にしパスツールの資料館、地下のパスツールの墓所に案内されました。墓所に豚、牛、鶏と共にカイコの絵が描かれていたのが印象的でした。研究施設を概観した限りでは、日本の大学よりも綺麗で施設も整備されているように感じました。

2.P社(2月23日ストラスブール)訪問

 提案した化合物について、経営陣より抗菌剤を開発するために展開して複数の化合物を新たに作出したいとの回答を得た。双方で資金提供者を探すことで、概ね意見の一致を見ました。

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3.Alsace Inter公社(2月24日ストラスブール)訪問

 同公社はアルザス地方の公的機関で、当方の技術内容を理解の上、同地区に合弁会社を設立すると研究費を2年間で、合計75%補助するとの魅力的なオファーを受けました。

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4.E社(2月25日リヨン)訪問

 ゲノム社の実験動物としてカイコを利用する技術と候補化合物を、面談に応じてくれた代表者は高く評価してくれ、獲得した助成金の対象となるので、共同研究など検討したいとのことでした。

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5.Lyon Biopole 公社(2月26日リヨン)訪問

 リヨンではバイオの革新的な技術に積極的な支援をしていて、プロジェクトの半額を助成するとのオファーを受けました。アルザスの公社と同様に外国のハイテク技術企業の誘致にとても熱心でした。ゲノム創薬研究所が持つ免疫活性食品の開発技術とガラクトースの血糖値降下機能に関する保有特許に強い興味を示し、パートナーを現地で探すとのオファーを受けました。

同公社はビル全体を使用している大きな組織。後ろ姿の二人が面談したマネージャー。

オーストリアで講演

私は、2008年10月にオーストリア政府に招聘され、日本のベンチャー企業のアントレプレナーを代表して、日本の産学連携のあり方と(株)ゲノム創薬研究所が開発した実験動物としてのカイコ幼虫の利用について、下記の講演を行いました。

【主催者】オーストリア国 連邦経済省

【演題】Go International Go Tech Technologietrends in USA und Japan

【場所】オーストリア国ウィーン市,グラーツ市,インスブルグ市

【期間】2008年10月17日~21日

【講師】関水信和(日本のベンチャー企業経営者を代表)MITの産学連携責任者2名(米国の産学連携関係者を代表)オーストリア国連邦経済省の担当者

【参加者】ウィーン市,グラーツ市,インスブルグ市のベンチャー企業関係者,製薬企業,投資家など50人程度

【使用言語】英語

ウィーン会場にて、日本のベンチャー企業について説明を始めたところ

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インスブルク会場で、日本のベンチャー企業の現状と(株)ゲノム創薬研究所が開発した実験動物としてのカイコ幼虫の利点を説明しているところ

参考:実験動物としてのカイコの利点の詳細については、私らが後年執筆した論文をご参照008_DDT-12-00041-CM proof_pp226-229.indd (jst.go.jp)

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日本の大学発ベンチャー企業は資金調達の機会に恵まれていないことから、運転資金をいかに確保すべきかを示したチャート図。

 大学発ベンチャー企業の“死の谷”を短くする知的財産戦略として、ベンチャー企業が持つ色々な技術を活用して副次的な製品を開発し(“金のなる木”を育てる)、主要製品の研究資金を獲得する方法を提案しました。講演の参加者からは、欧州においても有効な戦略との評価を得ました。

帰路、ベルリン工科大学にて、産学連携責任者と知的財産の取り扱いについて議論 

 オーストリア講演の帰路、ベルリン工科大学、ケンブリッジ大学の産学連携ないし大学発ベンチャー企業の関係者とも議論を行いました。ドイツ、英国は産学連携が大変進んでいて、産業イノベーションの中心的な存在となっていることを知りました。

ベルリン工科大学の産学連携責任者と産学連携スキームを議論

ケンブリッジ大学の産学連携関連組織であるケンブリッジ・エンタープライズなどを訪問

渋沢栄一について

 渋沢栄一は日本初の起業家と言えます。彼は1867年の渡欧の際に多くのことを学び、そして彼は帰国後に起業を通してその実践を行いました。私は2014年にパリに行き、彼が宿泊したホテルや下宿先にその足跡を求め、当時のホテルの古い写真や1867年に開催されていた万博の資料を見つけました。そして論文「渋沢栄一における欧州滞在の影響ーパリ万博(1867年)と洋行から学び実践したことー」を2018年に発表しました。

論文(序文)の一部をご紹介します。

「渋沢栄一は明治期に多くの企業を設立し日本の近代産業の礎を築いた人物である。彼は,江戸末期に徳川昭武に随行してフランスを始めとした欧州に滞在した。その洋行(以下,「洋行」)が,「自分の一身上一番効能のあつた旅」だったと,後年,彼は述べている。この洋行は彼が満 27 歳の時の初めての海外渡航で,強い印象を受けたと思われる。この27 歳という年齢は語学習得には遅すぎる年齢と言えるが,社会勉強という意味では基本的なことを理解した時期であり留学に相応しい年齢と言える。 —中略—
 渋沢は明治維新の前に近代産業が皆無であった日本より洋行し,欧州の進んだ技術・文化に接したわけで,その影響は計り知れないと思われる。渋沢の洋行の生涯における影響はあまり過大評価できないというような見方もあるが,筆者には,滞在期間は短くとも渋沢は洋行の経験から生涯を通じて極めて強い影響を受けたと思えてならない。」(論文の全頁カラー版PDF→千葉商科大学学術リポジトリ (nii.ac.jp)

 私の研究成果の一部は雑誌『クルーズトラベラー』2021年春号に取り上げられ記事となりました。(下記は記事の一部です。)



渋沢が随行した徳川昭武ら一行が宿泊したホテル

専門家派遣事業に参加

 私は中小企業庁、千葉県、茨城県が推進している専門家派遣事業のエキスパートとして登録されています。各県の産業推進機構からの要請でベンチャー企業を訪問し、下記の項目を専門領域としてアドバイスさせて頂いています。

専門領域

1.知財・商品開発

2.財務

3.産学連携

4.起業

 尚、埼玉県のベンチャー企業は、埼玉県産業振興公社の専門家派遣事業(下記URL)をご利用頂けます。費用の一部を同公社が負担し、企業は専門家を指名できます。ご興味のあるベンチャー企業の方は私にご連絡ください sekinnnn2 アト yahoo.co.jp (アト=@)。

専門家派遣 | 公益財団法人 埼玉県産業振興公社 (saitama-j.or.jp)

ゲノム創薬 創業

 私は、2000年12月に東京大学薬学部の教授であった兄、関水和久と二人で、大学発のベンチャー企業として(有)ゲノム創薬研究所 (genome-pharm.jp)を設立しました。当時、兄は大学の教員で私は銀行員であり、共に就業規則の兼業禁止規定に拘束されていました。そこで父親に社長になってもらい、私達兄弟は出資者となる形態を取りました。出資者であれば問題なく、週末に両親宅で”経営会議”を開いていました。大学発のベンチャー企業というのはまだほとんどない時代で、大学の関係部署に説明するのは容易ではありませんでした。しかし製薬会社からは共同研究の案件が積極的に持ち込まれました。製薬会社からみると従来の直接大学と行う共同研究では研究成果の知財の確保に難点がありましたが、大学発ベンチャー企業との共同研究という型にすることにより、この問題が解決するという利点がありました。契約関係を下記に示します。

 上記の図は、論文「新しい産学共同研究モデルによるゲノム創薬事業の試み」『臨床薬理』Jan.2002(ja (jst.go.jp)からの抜粋です。私達はこのスキームが大学と製薬会社とベンチャー企業にとって、合理的で知財の権利関係の問題を解決できると説明しました。そして論文発表を行ったり学会で発表するなどしました。創業した会社は、社員を4名雇用して大学の研究室に派遣して、製薬会社との共同研究を実施しました。この大手製薬会社との共同研究の実績と技術力が高く評価されて、大手ベンチャーキャピタルが出資を検討してくれました。2005年に兄と二人で、同ベンチャーキャピタルの役員の前でプレゼンしたところ、将来上場できるほどの成長力が期待できるとの評価を得ることができました。その出資金で研究員を増員し、会社は株式会社に組織替えし、私は脱サラして会社経営に専念しました。

 大学との関係などから、役員に就任するのを避け、アントレプレナーという肩書で、出資者を募り、また製薬会社や食品会社など多くの企業に共同研究開始のための営業活動を行いました。創薬事業は商品化に時間がかかることから、健康食品を開発するための技術開発を行い食品会社との共同研究契約ないし特許権の一部譲渡契約により会社の運転資金を確保する営業戦略を取りました。小さなベンチャー企業が二つの事業を行うような形となります。

 具体的には、上記の図のように新規構成物質事業が「主力商品」で、自然食品事業が「副次的商品」となります。ベンチャー企業が主力商品の開発資金を獲得するために副次的商品を開発する考え方は、大変ユニークなもので、私の博士論文の主要なテーマとなりました。同社は現在でも、この複数の事業を併行して行う戦略を取っています。

 このような戦略で開発している代表的な薬剤の候補物質が、ライソシンE(本ブログの別項にて紹介)であり、代表的な食品(ゲノム創薬が開発した乳酸菌を利用)が酪王協同乳業株式会社様が生産している下記ヨーグルトです。

自己紹介

関水信和と申します。「ベンチャー企業経営」、「社会人の自己啓発」という2つの専門領域を持っています。ベンチャー企業の起業を検討されている方との情報交換の場として、本ブログを開設することとしました。よろしくお願いします。

 尚、社会人の自己啓発に関する情報交換の場として、もう一つブログを開設しています。 (sekimizu-selfdevelopment.com)

プロフィール
氏名 関水信和
学歴 

慶応高校卒、慶応大学 商学部・文学部卒、多摩大学院経営情報学研究科修士課程修了、中央大学法学部卒、同大学院法学研究科博士前期課程修了、後期課程修了単位取得、東京大学大学院工学系研究科修士課程技術経営 MOTコース修了単位取得、千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了、博士(政策研究)


職歴

三井住友銀行ビジネス営業部部付部長、持田商工法務部長など歴任

聖学院大学にて「ベンチャー論」を10年間講義


現職

千葉商科大学特別客員教授、帝京大学客員教授、ゲノム創薬研究所アントレプレナー、ソフトモビリティーイニシアティブ(千葉商大発ベンチャー)取締役、税理士   

資格 税理士、宅建(登録資格)


著書

『働きながら学べる社会人大学院・通信制大学』2017年 中央経済社刊
『技術系ベンチャー企業の経営・知財戦略』2018年 中央経済社刊

ベンチャー企業経営に関する著書

私は2000年12月に(株)ゲノム創薬研究所(ホームページ:ゲノム創薬研究所 (genome-pharm.jp))を兄と共同で立ち上げ、現在もアントレプレナーとして同社の経営に関与しています。同社の事業を軌道に乗せるために、考えた経営手法と知財戦略を中心としたベンチャー企業経営に関する著書『技術系ベンチャー企業の経営・知財戦略』を2018年に出版しました。この本に書かれている経営手法は私が学んだ社会人大学院で修得した知見に基づいたものも多くありますが、逆に同社の経営を通じて獲得した独自の経営ノウハウが私の博士論文ないしこの本の大事な部分を占めているという事情があります。

私は社会人の自己啓発とベンチャー企業経営の二つの専門領域を持っていますが、それらは、それぞれが独立したものではなく、密接に絡み合いながら、構築された私の専門領域です。