私は、2000年12月に東京大学薬学部の教授であった兄、関水和久と二人で、大学発のベンチャー企業として(有)ゲノム創薬研究所 (genome-pharm.jp)を設立しました。当時、兄は大学の教員で私は銀行員であり、共に就業規則の兼業禁止規定に拘束されていました。そこで父親に社長になってもらい、私達兄弟は出資者となる形態を取りました。出資者であれば問題なく、週末に両親宅で”経営会議”を開いていました。大学発のベンチャー企業というのはまだほとんどない時代で、大学の関係部署に説明するのは容易ではありませんでした。しかし製薬会社からは共同研究の案件が積極的に持ち込まれました。製薬会社からみると従来の直接大学と行う共同研究では研究成果の知財の確保に難点がありましたが、大学発ベンチャー企業との共同研究という型にすることにより、この問題が解決するという利点がありました。契約関係を下記に示します。
上記の図は、論文「新しい産学共同研究モデルによるゲノム創薬事業の試み」『臨床薬理』Jan.2002(ja (jst.go.jp)からの抜粋です。私達はこのスキームが大学と製薬会社とベンチャー企業にとって、合理的で知財の権利関係の問題を解決できると説明しました。そして論文発表を行ったり学会で発表するなどしました。創業した会社は、社員を4名雇用して大学の研究室に派遣して、製薬会社との共同研究を実施しました。この大手製薬会社との共同研究の実績と技術力が高く評価されて、大手ベンチャーキャピタルが出資を検討してくれました。2005年に兄と二人で、同ベンチャーキャピタルの役員の前でプレゼンしたところ、将来上場できるほどの成長力が期待できるとの評価を得ることができました。その出資金で研究員を増員し、会社は株式会社に組織替えし、私は脱サラして会社経営に専念しました。
大学との関係などから、役員に就任するのを避け、アントレプレナーという肩書で、出資者を募り、また製薬会社や食品会社など多くの企業に共同研究開始のための営業活動を行いました。創薬事業は商品化に時間がかかることから、健康食品を開発するための技術開発を行い食品会社との共同研究契約ないし特許権の一部譲渡契約により会社の運転資金を確保する営業戦略を取りました。小さなベンチャー企業が二つの事業を行うような形となります。
具体的には、上記の図のように新規構成物質事業が「主力商品」で、自然食品事業が「副次的商品」となります。ベンチャー企業が主力商品の開発資金を獲得するために副次的商品を開発する考え方は、大変ユニークなもので、私の博士論文の主要なテーマとなりました。同社は現在でも、この複数の事業を併行して行う戦略を取っています。
このような戦略で開発している代表的な薬剤の候補物質が、ライソシンE(本ブログの別項にて紹介)であり、代表的な食品(ゲノム創薬が開発した乳酸菌を利用)が酪王協同乳業株式会社様が生産している下記ヨーグルトです。